グルグルの理屈
油脂に苛性ソーダ液を加えてグルグルする。
最初の20分間は必死でグルグルしないと良い石けんが出来ないと言われていますが
これはどうしてなのでしょうか?ちょっと考えてみたことを書きました。
 左の図は油脂に苛性ソーダ液を加えて混ぜた状態を表しています。黄色の部分が油脂で青色の部分が苛性ソーダ液です。油脂の中に水の団塊が漂っているのです。これは水の上に油を一滴落としたときと、油を引いたフライパンの上に水を一滴落としたときのことを考えてください。油の上に水を落とすと水は丸く小さな塊になってしまいますね。油脂と水(苛性ソーダ水)を併せると油脂の中に水泡ができるのです。
 でもグルグルすれば混ざり合ってくれるのではないでしょうか?しかも油脂とカセイソ−ダが反応(ケン化)して石けんが出来るのだから、その出来た石けんが油脂と水を混ざり合わせてくれるはず。混ざり合ったら、さらにケン化が進んで、それで出来た石けんが・・・・と言うように連鎖反応してくれるはず。
 だったらそんなに必死でグルグルしなくても良いのではないかと考えてしまうのですが、実際はそうではないのです。
 左の図を見てください。私たちの感覚では、水はサラっとしたもの、水の分子はバラバラに散らばっているものだと言う感覚がありますが、実際は水の分子が数個から数十個集まって一つの塊を作っています。この塊をクラスターと言います。
 この水のクラスターは不純物が混じるとさらに大きな塊となり強固な集団になります。苛性ソーダ液の場合は強アルカリの非常に強いイオンのナトリウムのために強く大きなクラスターが出来ていると考えられます。
 そのため油脂と苛性ソーダの混合液を軽くグルグルするだけではこのクラスターを細かく分解することが出来ずに油脂とナトリウムが接触する機会が少なくなりケン化が進みません。(2液の反応は2液の界面でしか起こりません)
 さらにケン化で生成した石けんの一部は親水基を水のクラスターの側に、疎水基を油脂のある外側に向けて並びます。これは通常の、石けんで洗い物をする場合のミセル形成の逆の配置になります。このような状態になると、苛性ソーダ水のクラスターはさらに油脂と隔離され、W/O型のエマルジョン(油脂の中に水系のミセルが乳化している形態)となり、一見すると溶けているかのように見えていても、反応はそれほど進んでいなくて、しばらくすると油脂と苛性ソーダ液が二層に分離してきます。
 よく掲示板で「分離したんです」と言う場合は、たいていがこのような状態に陥っているのです。

 ブレンダーなどで強くグルグルすると、クラスターは細かく分断され、ナトリウムイオンと油脂とが接触する機会が増えケン化が増進されます。そしてトレースが出てくると、その粘性のために未反応の液同士が凝集して再び大きなクラスターを作ることができなくなります。その結果ケン化がその後もスムーズに連続して起き、ジェル化するような高温にまでなるのです。
 そうすれば、反応が早く終了し、早く使える石けんになります。ただし乾燥は別です。